英EMI、DRM撤廃を発表

EMI


EMI Musicは4月2日、自社の全楽曲を従来よりも高音質、かつデジタル権利管理(DRM)なしで提供する新しい小売業者向けプレミアムダウンロードを立ち上げると発表した。

 この日からEMIはオンライン音楽小売業者に、DRMなしのオーディオフォーマットで各楽曲およびアルバムを、業者の選んだビットレート(最高でCDクオリティ)で提供する。



ついに正式に発表になりました。これはもの凄いトピックスです。


最初に話が出たのが2月ですが、その先が早かったですね。
ジョブスの論説がトリガーになった(ように見える)この件の経緯ですが、
その主張主体が、Apple法人ではなくジョブス個人であったことで、
EMIも上手にランディングすることができたように見えます。
Appleはとても上手な方法をとったなぁと思います。


DRMで保護されるのは著作権者であって利用者ではなく、
ではなぜ著作権者が保護されなければいけないかというと、
極端に言えば、彼らが損をする=生活が成り立たなくなるからです。
これは1枚売れたら幾ら、というモデルでビジネスが成り立っているからで、
別のモデルが創造できれば、著作権保護は完全絶対条件とは限らなくなります。
代替モデルを、安易に考えれば広告挿入モデルが考えられますし
もう少しヒネるとGoogle的な需要機会への付加情報提供型広告モデルと
なりますが、どれもシックリきません。
個人的には、シェアリング機会に対しての何らかのフィー配分モデルが
イメージとして茫漠と浮かぶのですが、これは一歩間違うと、
今ひとつ浸透しないNapsterと同じになってしまうので、難しいところです。


19世紀後半に映画が世の中に出た時に、
舞台俳優は一斉に反対をして映画出演をもボイコットしたそうです。
理由は舞台にお客さんがこなくなるから。
当時は出演料は出演回数に比例していた(つまり演技総量がフィーと比例していた)ようです。
それが、映画産業が台頭してきてからは、興行的成功が出演料に最も影響するようになりました。
そうすると、俳優の収入への直接関係性は、演技の総量よりも作品の興行性の方が強くなります。
で、TV放送が開始された時には、
映画俳優は一斉に反対をしてTV出演をボイコットしたそうです。
後の流れは似たようなものですが、今度は興行性から、TV出演のポピュラリティをベースとした
広告出演料へのシフトが生まれることになりました。
(近年はDVDなどコンテンツの2次利用収入のウエイトの方が高まっていますが)


このようなモデル転換のあまり無かった音楽産業も、
「録音」=「アーカイブ性の獲得」 の次の
大きなパラダイム転換を迎えているということでしょうか。
どちらにしても成功者が出れば右へ倣えになるのは見えているので、
一利用者としては喜ばしいことではありますね。


1つだけ気になるのは、

iTunes Storeで提供されるEMIのDRMフリー楽曲は、従来の2倍の音質のAACフォーマットで提供される。価格は1曲当たり1.29ドルで、ユーザーはDRM付きの曲を99セントで購入することもできる。

この中途半端さ加減ですね。
コンテンツ拡散が前提なんだか違うんだか煮え切らない的で。


ちなみにEMI系所属のアーティストはこんな感じです。
Abbey Road
Atom Heart Mother
Oh No
コリーヌ・ベイリー・レイ